団員の声(感想文)

台湾での新発見、そして再発見

第一班 班長 藤村一

10月に行われた壮行会の折に挨拶をさせてもらい、その時にもお話をしたが、実はこの慰霊訪問の旅の前日は金美齢先生の講演会を行い、私はその責任者の1人であったので11月20日から直方に泊まり込んで準備にあたった。この大きな会を終えて直後の台湾行きは、正直に言ってかなりの不安があった。しかしこんな体験をできる機会は滅多にないから行って来いという先輩や同僚の後押しを受け、また台湾出身の金先生の講演に強い励ましをいただき、参加させていただいた次第である。しかし、無理をしてでも参加させていただいて本当に良かったと実感している。

この慰霊訪問では未知のことを数多く体験させていただいたが、その中でも強く胸に刻まれたことが3点ある。

まず第一は台北に到着したその日、芝山巌を訪れ、小菅団長のご配慮で六士先生の墓前に花を手向けさせていただいたことである。小菅団長より、「福岡教育連盟の先生を代表して」という紹介を受けたとき、自ずと背筋が伸び、花束がずしりと両腕に重みを加えたような気がした。

日清戦争終結後、日本統治下となった台湾において教育を施そうと、高い志を持って渡海した六人の教師たちは、台湾の子供たちと寝食を共にして日本人同様にまたそれ以上に愛情を込めて教育を施し、それが台湾の近代教育に繋がっている。六士先生は志半ばで非命に倒れたが、その意志を継ごうと、その後も300名を超える多くの教師たちが、危険を顧みず命を賭して異郷の地の教育に身を捧げたという話を聞き、同じ教育者として身の引き締まる思いを抱いた。我が身命を賭して、これだけの愛情をもって子供たちの教育にあたることができるか、同じ教育者として深く自問自答せざるを得なかった。

もう一つ忘れられない体験は鹽水小学校の訪問である。われわれを歓迎するセレモニーにおける子供たちの真剣な姿に心を打たれると同時に、授業はほとんどの教室でパソコンを活用した授業で、プロジェクターから投影された画面が黒板代わりになっており、日本よりもICT化が進んでいることに驚いた。また、校内に神社があることにも感激だったが、校舎の入り口に「禮義廉耻」と額が掲げられていたことが印象的であった。「禮義廉耻」とはつまり「礼儀を重んじ、悪い行いを恥じ、謙虚に正しい行いをせよ」ということであろう。まさにわが国から失われつつある精神がこのようなところに生きているということを感じた。古い精神文化を大事にしながらも、新しい技術を取り入れる姿勢に大いに学ぶものがあった。

そして最後に、この慰霊訪問の間、小菅団長を始め皆さんが口を揃えて「教育が大事だ」とおっしゃり、「先生頑張れ」と激励の言葉をいただいたことである。

鹽水小学校に掲げてあった「禮義廉耻」をはじめとして、今も台湾に息づいている「日本精神」をもう一度子供たちに徹底して教えること、子供たちを戦後教育の自虐史観から解き放ち、正しい歴史観を持たせて自尊感情を育てること等々、これからの教育に対して皆様から期待されているものの大きさを実感した。折しもこの訪問期間中に、北朝鮮が韓国に向けて砲弾を放つという事件が起こった。折からの尖閣諸島の問題もあり、これからの日本を担う子供たちにきちんとした国家観、国際感覚を身に付けさせること、そして日台の望ましい関係を構築させるには教育をおいて他にないということを改めて深く認識し、教育に携わる者としてその責任を痛感した。

正直なところ、私自身も身近な国「台湾」を意識したことは今までほとんどなかったが、今回の訪問によって多くのことを学ばせていただいた。台湾の方々の我が国に対する思い、そして、我が国の良さ、素晴らしさ、子供たちに教えるべきことを新発見そして再発見した。いつか修学旅行で高校生を台湾に引率し、私がいただいた感動を生徒たちにも味わわせ、日本人としての誇りや自覚を深めさせたいと思っている。

初めての台湾で初対面の方ばかりであったが、皆様親切に接してくださり心から感謝申し上げたい。小菅団長をはじめ、スタッフの皆様には準備から事後処理までお世話になった。そして団員の皆様にも道中いろいろとお話をさせていただき、多くのことを学ばせていただいた。特にリピーターである中村哲様、原田泰宏様にはバスで隣席になったご縁で、さまざまなプラスα情報を教えていただき本当にお世話になった。

皆様のご期待に応え、我が国の教育の正常化を果たしていくことをお誓いして、お礼に代えたいと思う。

第12次 団員の声(感想文)全26件

訪問次で探す

お問い合わせお問合せ