団員の声(感想文)

森先生の「海ゆかば」

第五班 副班長 新谷章

森敬惠先生の「海ゆかば」を中華民國で拝聴した。同國に於ける御英霊鎮魂と顕彰の旅の行く先々で森先生は御霊に「海ゆかば」を捧げられた。異郷で、南の海で、眠って居られる御英霊に御供養申し上げる。森先生は法要されたが、自分は何も出来ず唯、頭(こうべ)を垂れて居るしか無かった。

森先生は御疲れの儘、旅行に突入。普段と違う食事と水に馴染まれず体調を崩され、とても歌える状態で無いのでは、と御察し申し上げた。さりとて、替わってあげましょう、と言うわけには行かない。「私、具合が悪いから止めます」が通らない土壇場だった。

その点、会社は合理的。担当者が欠勤しても代打を充て、仕事に差障り無い様に作って在る。当人で無いと困る場面は通常左程無い。職場には代わりの人は幾らでも居るのだ。

儀礼歌。将官に対する敬礼に用いた(防人〔さきもり〕の歌『雄叫』偕行社刊より)、とされる「海ゆかば」を一節(ひとふし)歌い始めると森先生は憑依の如く「『海ゆかば』を歌わせて戴きます。聞こえますかしら」と御訊ねになられて居らっしゃるのでは、と私には思えた。

愛知県幡豆郡三ヶ根山の殉国七士墓前祭で森先生が「海ゆかば」を御歌いになられた時も私は泣いた。御英霊に何等(なんら)報いず、今迄何をして来たのかと悔恨し、失われた時の重さに衝撃を受けたのだ。

歌が上手な人は世の中多い。然し、幾ら歌を巧く歌えても、歌う技量が優れて居ても、心を打つ、魂を揺さぶらなければ何にもならない。その様に歌える人は数少ないと思う。

美空ひばりさんの「悲しい酒」と「みだれ髪」も身につまされる音楽だ。ひばりちゃん(私達はそう呼んでいた)と森先生を並記したので、御二方から叱られそうだが、敬愛の念を込め敢えて書かせて貰った。

第14次 団員の声(感想文)全18件

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