団員の声(感想文)
日華(台)親善友好慰霊の旅に参加して
第五班 副班長 松下美佳
あの感動から、早2週間。台湾でのいろいろな出来事を思い起こしている。空港に降り立った時の暖かい空気、緊張の面持ちで乗った新幹線、初めて歌った国歌「君が代」、行く先々で山のように積まれていたお菓子と果物。そして台湾の方々の温かさ、純粋さ、何もかもが驚きと喜びの思い出となった。
思い返すと、小林よしのりの「台湾論」を読み、台湾に憧れ、人々との触れ合いとそこに根付く日本人の足跡と文化をこの目で確かめたいと思い続けちょうど1年、その希望が叶った。そこには、飛虎将軍廟、烏山頭水庫、獅頭山勧化堂、東石富安宮が紹介されており、これら全てに日本人が祀られていることを知った。しかも台湾の方が守って下さっていると。これまで私は台湾の歴史を習った記憶が全くない。さらに歴史の中の日本には、漠然とした悪のイメージを持っていた。国旗を意識したこともなければ、国歌を耳にするのはオリンピックの時だけだった。そんな中で、日本語が話せる外国人が存在すること、しかも、親日であること、そして、私の感覚からは到底想像も出来ないような責任感と強さ、優しさ、それと、国のために忠誠を尽くすという、「公」の精神に溢れた日本人が過去には当たり前に存在していたことを本から知り、あまりの衝撃に涙が止まらなかった。ここで、先人の方々への尊敬の念とともに、その血をひく日本人であることへの誇りが私の心に初めて芽生えた。そして、日本という国、また、日本人であることを意識するきっかけをもたらしてくれたのは、まさに台湾への関心だった。
訪台において特に印象に残ったのは、蕭錦文さんとの出会いだ。今年の夏、東中野の小さな映画館で、「台湾人生」というドキュメンタリー映画を見た。数人の台湾人がそれぞれに日本への思いを語る内容だったのだが、その出演者の一人である蕭さんと、25日の昼食の席で思いがけず出会ったのである。映画の中で蕭さんは、日本兵として戦ったこと、白色テロによって師範学校の助教授であったお父様が行方不明になってしまったこと、また弟さんも銃殺されたこと等を語った。そして最後に、日本人は好きだけど、日本の政治家に対しては怒りを持っており、せめて一言、政治家からの謝罪を求めている、といった内容を力の限りに訴えていた。初めて耳にする台湾の方の生の声に、私の心は激しく揺さぶられた。その数日後、上映挨拶に蕭さんがみえるとのことで、再び私はその映画館に足を運んだ。一言蕭さんに、「感動しました。」と伝えたくて。しかし、上映前の挨拶のみで、映画を見終わった時には既に帰られた後だった。ボランティアをなさっている二・二八記念館に足を運ぶしかお会いする術はないと思っていた。ところが、その蕭さんをあの昼食会場で見つけた時は奇跡だと思った。高まる気持ちを抑えきれずに名刺を持ってご挨拶へ伺ったら、力強い語り口が映画の中の蕭さんと全く同じで大変嬉しかった。日本統治時代、またその後の不遇な日々を生き抜いた蕭さんの姿を見て、先人の方々の真剣な生き様がリアルに感じとれたからこそ、私の心は大きく動いたのだろう。
ともすると、まるで異人種のように、価値観、ライフスタイル、そして発想そのものに食い違いが起こる親と私の世代。もっと合理的にもっと単純に…と、そんな生き方がより良いものと感じていた。特に社会人となって、尚そのギャップを感じて随分悩んだこともあった。しかしそこには、歴史への無知が根本原因にあったのではないかと最近痛感している。日本人が如何にして日本文化を築いてきたのか、さらに八田與一技師の烏山頭水庫にみる、あの広大なダムを「化外の地」に如何に建設せしめたのか、そして飛虎将軍廟の杉浦少尉の我が命よりも他の命を守るという重い選択を、咄嗟の判断で実行するといった偉業を如何に成し遂げることが出来たのか。事実を知れば知るほど、先人の方々は日本国を愛し、その国民としての強い信念と誇りを持って生きていたのではないかと感じさせられる。このことは従来の私には理解しにくい感覚であった。だからこそ自分自身をしっかりと律し、国のため、家族のためにと生きていた先人の方々を尊敬せずにはいられない。もはや私の価値観は180度転換してしまった。そして日本人に生まれたことにこの上ない誇りを感じる。また、その誇るべき日本文化を台湾で根付かせ、日本人を大切に思い祀って下さっている台湾の方々にも感謝せずにはいられない。
この旅で私は、当初の期待以上の日本に出会うことができた。戦争を知っておられる世代の方の大きな声、姿勢のよさ、几帳面な服装に至るまでそれを実感することができた。そして、憧れの日本人に少しでも近づきたいと願う日々である。
最後に、このような貴重な体験を実現させて下さった小菅団長様をはじめ、訪問団の皆様に深く感謝致します。ありがとうございました。
第11次 団員の声(感想文)全19件
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