第16回 台湾特別講演会 特別アピール(領土アピール)

特別アピール「舊圖ヲ保持シテ敢テ失墜スルコト無シ(大日本帝國憲法 告文 より)」

文久3年、長州藩は英・仏・蘭・米の四国連合艦隊と戦い敗れました。その後に続く談判で彼らは講和の条件として下関南端の彦島の租借を求めてきました。講和談判の使者にたった24歳の高杉晋作はこれを拒否し、賠償金支払い、下関砲台撤去など5つの条件で講和条約にこぎつけます。もし租借を受け入れていたら彦島は香港のような運命をたどっていたに違いありません。これは当時の日本人が貧富、貴賎、老若に拘わりなくいかに領土の重要性を認識していたかを象徴する出来事です。

今年は幕藩体制が崩壊して150年目にあたりますが、「五箇條ノ御誓文」によって開始された明治維新とは一体何だったのでしょうか。まず第一は日本人の領土の防衛でした。藩の領民にすぎなかった人々が国家の国民、陛下の臣民としての自己に目ざめ、国土や国境を意識し、男たちはその防人になり、女たちは戦人(いくさびと)の子を沢山産み共に他国の奴隷にはなるまいと決意したことです。その具現化として国軍である皇軍を創設しました。第二の「陸海軍人ニ賜ハリタル敕諭」です。第三は神武建国以来2500有余年に亘りわが国と臣民を導いて下さった天皇家の有り様を「皇室典範」として成文化したことです。第四は隙あらばわが国を併呑せんとする欧米列強と対等に渉り合うために最強の武器として「大日本帝國憲法」を制定したことです。そして第五は臣民の後続を「教育ニ關スル敕語」で担保したことです。

さて明治天皇は典憲(皇室典範と大日本帝國憲法)を裁定し発布するにあたり、祝詞である「告文(おつげぶみ)」でご自身を「皇朕(すめらわれ)」と自称されご先祖様であられる皇祖皇宗にご報告しています。次の「憲法發布敕語」では「朕國家ノ隆昌ト臣民ノ慶福トヲ以テ中心ノ欣榮トシ」として憲法発布の目的を鮮明に述べておられます。また、「上諭」では「朕ハ我カ臣民ノ權利及財産ノ安全ヲ貴重シ及之ヲ保護シ此ノ憲法及法律ノ範囲内ニ於テ其ノ享有ヲ完全ナラシムヘキコトヲ宣言ス」とまで述べられ国民国家建設の決意を打ち出しておられます。

まさにわが国・日本が世界史上類例のない一大家族国家として近代史に輝かしい第一歩を踏み出した瞬間です。しかし私たちは大事なことを見過ごすわけにはいきません。それは陛下ははじめの「告文」の中で「皇朕レ天壌無窮ノ宏謨ニ循ヒ惟神ノ寳祚ヲ承繼シ舊圖ヲ保持シテ敢テ失墜スルコト無シ」と述べておられることです。幕末から明治にかけて、否、昭和20年代に至るまでアジア・アフリカにおける近代国家としては唯一の独立国としてその地位を誇ったわが国・日本ですが、それは自前の版図を領有してこそはじめて可能であったのです。このあまりにもあたり前の常識が、今、まさに崩されようとしています。

それは他でもない外国人による土地取得です。西の対馬が韓国の侵略を許し、北の守りの要である北海道が中国資本の集中砲火にさらされています。すでに東京ドーム一千個分を越す土地(領土)が買収されました。まさに「武器をもたない、目に見えない戦争が繰り広げられている」のです。しかもこれらの経済侵攻は「合法的」に行なわれています。驚くべきことに、今のわが国には外国人が土地などの不動産を買収することへの規制やルールが存在しません。領土・国民そして主権があってこその国であるし、それらが「商品化」されていないからこそ「安心」して末代までの夢や計画が描けるのですが、外国人が土足で自宅に上がり込み、娘(=国民)をさらっていき、札ビラで土地(=領土)を買い叩けるような情けない国家が一体歴史上どこに存在したでしょうか。

イギリスから海を隔てた北の果てにアイスランドという小さな島国があります。中国と友好関係を結んでいるにも拘わらず、土地取引については断乎とした態度で臨み、中国資本には決して勝手には買わせないという態度をとっています。中国ではアイスランドによる土地購入が認められないのに、どうしてアイスランドは中国による土地購入を認めなければならないのか、という素朴な疑問を国家による決断にまで高めたことはヨーロッパ各国に図り知れない波紋を投げかけています。人口30万人で、しかも軍隊さえ保有していない国ができていることを、1億2000万人の国民が居住し、世界有数の「軍事力」を誇る自衛隊がありながら、なぜわが国にはできないのでしょうか。

一方、隣国の台湾ではどうでしょうか。昭和19・20年、台湾最南端の鵝鑾鼻岬とフィリピン北端バタン諸島の間のバシー海峡は、ここで潜伏する米潜水艦や爆撃機の攻撃のために、わが国の多くの輸送船が海没して甚大な被害を受けました。そんな中、九死に一生を得たひとりに中嶋秀次氏がいます。氏は沈められた200隻と25万将兵の水漬く屍を弔うため昭和56年私財を投じて潮音寺を建立されました。氏の後半生そのものである広大な敷地と寺院は、中嶋氏を中心とする法要団に所有権が移ったかと思いきや、台湾では外国人の土地所有権は認められていません。そのため現在は高雄の鐘佐榮氏が地権者として管理運営されています。外国人が地権者になれない制度、こんなに健全な領土空間はありません。

大東亜戦争の末期に「特攻」という手段によってわが身と引きかえにしてまで守ろうとした「国土(=舊圖)」を商品一般の用語である「土地」として軽々に外国人に売却する愚は決して犯してはなりません。「国破れて山河在り」は唐の詩人、杜甫による五言律詩の一句ですが、このまま推移すると「国破れて山河もなし」になってしまいます。私たち「日本人」は一体どこにいけばいいのでしょうか。自国にいながらにして「難民認定」を受けろということでしょうか。その時のために早々と名所旧跡や景勝地を「世界遺産」に登録しているのでしょうか。

50年に及ぶわが国の統治の遺産である「近代化」と「日本精神」を国づくりの根幹に復元した台湾、明治国体の覇気を封印しその金字塔を破壊し続けた戦後の日本、同じ70年とはいえ余りにも違いが大きすぎます。わが国はヨーロッパではアイスランドに、そして近隣諸国では世界一の親日国・台湾に学び領土を防衛しなければなりません。

私たちは、安心して将来の夢や計画を描ける日本人国民のための土地法制の改革を強く求めます。そしてわが国の行く末と子々孫々のために、靖國の英霊のご遺志を尊重継承し「舊圖ヲ保持」していく所存です。よって本講演会は、外国人が何らの法的規制もなく、所構わず好き勝手に領土を買い漁れる現在の状態の早期是正を、中央、地方問わず立法府、行政府に籍を置く全ての責任ある皆様に切に要望し「特別アピール」と致します。

平成30年6月10日
日華(台)親善友好慰霊訪問団
第16回台湾特別講演会 参加者一同

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