古蹟後壁黄家

エピソード - 古蹟後壁黄家 ~ 福建様式の中庭

台湾李登輝友の会総代表の黄崑虎先生

台南の烏山頭ダムから車で北西へ約30分。嘉南大圳のど真ん中、台南市後壁区後壁里にある古蹟後壁黄家は、大正15年(1926)に建てられたもので、福建様式の中庭(四合院)を持つ台湾で現存する数少ない住宅のひとつで、平成20年(2008)に台湾の文化資産として古蹟に指定された。

この住宅は、何と台湾李登輝友の会総代表、総統府国策顧問の黄崑虎先生のご自宅である。諸外国の要人も訪れる大変由緒ある場所なのである。

後壁黄家は七包三式的四合院(7つの建物と3つの様式に囲まれた中庭)の建物で、敷地は約6000坪で、正面から入った母屋は、中華回廊式の豪邸だ。門の中にも左右に部屋が続き、さらに中門、奥の庭へと続く。中庭に面した回廊部分の軒先には3匹の龍があしらわれている。一番上と真ん中の龍は、家の中を向き、「家を守り、福をもたらす」そうで、一番下の龍は外を向いている。これは、「自分のところに来た福の半分は外の人に返す」ためだということだ。自分たちだけが繁栄するのではなく、共に福を分かち合おうという当主の考え方だそうだ。中庭の奥にある建物が屋敷の中心。入り口の周りには、上と左右に家訓が書いてある。漢字を目で追いやると、勤勉、勤労、社会奉仕という意味の言葉が多くある。

屋敷の中には、日本時代に黄家が経営していた「黄振興合資会社」の社訓と社則が日本語で書かれた額が飾られており、その中に「優秀なものには、会社全員の承認を以って、奨学金を支給する」という項目もあり、会社や社会全体で優秀な若者を支援し、育てていったことが伺える。

慰霊団では、平成21年の第11次訪問の折に黄崑虎先生のお誘いで、後壁黄家を訪問して以来、2度目の訪問となる。その時の「私の育った家こそ、八田技師の造られたダム、大圳の恩恵を受けた人たちの家のひとつなのです」という言葉をはっきりと覚えている。

(文章:五郎丸浩/第20次結団式)

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