南天山濟化宮

エピソード - 4万の戦歿者を祀る南天山濟化宮

台湾の靖國神社

私たち慰霊訪問団は毎年、台湾各地にある元日本人である台湾の方々の慰霊地がある場所にできるだけ足を運び、慰霊の誠を捧げている。そうした私たちの努力が実り、第8次慰霊訪問ではじめて新竹県北埔にある南天山濟化宮という神社を訪れることができた。おそらく日本の書籍でもあまり紹介されていない場所ではなかろうか。

この神社の存在を知ったのは、私たち慰霊訪問団と長く交流のある元日本人の陳清華さん(台南在住)から手紙と一緒に新聞の切抜きが送られてきたからである。早速、九州不動産専門学院でアルバイト中の台湾からの留学生の呂宛真君(台中出身)に翻訳してもらった。その記事は、東京の靖國神社に祀られていた台湾出身の英霊を分祀した「台湾の靖國神社」と呼ぶに相応しい内容だった。

その記事を頼りに初めて新竹県北埔の山間にある濟化宮を訪問した。そのとき、現地の方より「濟化宮に観光バスで日本人が来たことも、またご案内したことも今回が初めて」と言われた。

濟化宮は神社といってもいわゆる神宮式の建物ではなく、本堂は観音廟でその横に7階建ての十地塔がある。その7階建てのお堂には、40年前に靖國神社から台湾人の御祭神の霊璽簿の複製を受取り、それに伴い「霊璽」と書かれた位牌が製作され、李登輝元総統の実兄である李登欽氏をはじめ、約4万体が納められている。靖國神社に祀られている台湾人は約2万8千人なので、その差1万人余は日本では「戦死」と見なされなかった方々だという。

当時、遺族の方々は日本の靖國神社まではとても参拝にいけないので、濟化宮の建立はとても喜ばれたという。現在ここは「台湾の靖國神社」と呼ばれている。先の大東亜戦争で亡くなった人々の供養は、ここで今日まで地元の有志によって営まれているのである。

(文章:五郎丸浩/第19次結団式)

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