孔子廟(臺中)

エピソード - 孔子廟 ~ 儒教の祖・学問の神様

台湾各地にある孔子廟

儒教の祖として日本でも有名な孔子。中国では著名な学者や政治家、軍人といった尊敬すべき人物を神格化し、廟にお祀りする習慣がある。孔子はその代表的人物で、すでに前漢の時代から孔子を本尊とした孔子廟が建立されていた。台湾の主要都市には必ずといっていいほど孔子廟があり、学問の神として崇められている。台中孔子廟はその中でもひときわ大きなもので、台中市の中心部から近い割りには、都会の喧騒から隔離されたような空間。静謐な場所でありながらも、ゆっくりと時間を過ごせる癒しの場でもある。

門を入ると目の前に池があり、正面に回廊に囲まれた山門、そしてその中に一番重要な建物があるという構造は、日本の寺院建築と同じである。

雑然とした音がひっきりなしに流れている台中の街だが、境内に入ると別世界のような静寂が広がる。回廊を入ると正面に大きく軒反りのある屋根を持つ大成殿が翼を広げるように立っている。屋根は朱色だが、その佇まいは日本のお寺そのものである。

孔子廟は台中市が管理する建物で、回廊はカルチャーセンターや展示室になっている。境内にはお年寄りの姿、子ども連れの母親達と平和な空気が流れる。回廊の屋根は緩やかな曲線を描き美しい。

台中市の孔子廟は昭和45年(1970)に建てられた新しいものだか、その様式は大陸の「儒教」のスタイルそのままである。今の台湾には土着の習俗は殆ど残っておらず、全体を中国文化が覆っているが、台湾・日本という2つの国が、全く違う宗教世界でありながら、その建築様式は同じで、同じ空気を醸し出しているのは興味深いことだ。

(文章:五郎丸浩/第20次結団式)

お問い合わせお問合せ