龍山寺

エピソード - 龍山寺 ~ 仏教・儒教・道教の神々と龍

台湾の人々の心の拠りどころ

正式名称は「艋舺龍山寺(ばんかりゅうざんじ)」、艋舺は現在の萬華地区の意味で台北発祥の地と言われている。大陸の福建省泉州から移住した人々は、生活環境が悪く疫病が流行したため、神のご加護と平安を祈るため、1738年に福建晋江安海龍山の分霊として創建した。

龍山寺は伝統的な四合院宮殿様式で、北を背に前殿、本殿、後殿、左右の鐘楼、鼓楼と回廊で「回」の形に構成されている。道教や儒教の影響も受けているが、基本的には仏教寺院で、本尊には観音菩薩を祀っている。大東亜戦争中には、米軍の空襲により本殿が全焼する大惨事であったにもかかわらず、本尊は無傷であったため、当時観音様のお膝元は絶対安心だと信じられ、空襲の度に人々は龍山寺に集まったと言われている。その他、地震や台風、火災などにより何度も破損したが、その都度改修・修復され、現在の伽藍は昭和28年(1953)に再建されたもので、今も昔と変わらず台湾の人々の心の拠りどころとなっている。また、昭和61年(1986)、戒厳令に基づく言論統制に反対する人々が決起した519緑色行動の舞台となった場所でもある。

龍山寺は、芸術的価値も高く、国の古蹟に指定されている。反り返った屋根の上から今にも飛び立ちそうな龍や鳳凰は、色鮮やかな瑠璃細工でできており、その精巧さは目を見張るものがある。また正面入り口にある一対の龍柱は台湾唯一の鋳銅製で、柱に巻きつく大龍と細かく表現された神々や動物が素晴らしい。本殿には8頭の龍が螺旋状に32組の層をなして輪廻を象徴した円形天井があり、1本の釘も使わない匠の技は、国宝に指定されている。

奥の後殿には航海の守護女神である媽祖(まそ)、学問の神として文昌帝君(ぶんしょうていくん)、商業の神として関羽(かんう)など、道教、儒教の神や歴史上の人物も合わせて祀られている。台湾ではこうして多用な神様を一緒に祀っているお寺がよく見られるが、寛大でおおらかな国柄を表している。

(文章:五郎丸浩/第20次結団式)

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