故宮博物院

エピソード - 故宮博物院 ~ 漢文化の精華

69万7千点にも及ぶ驚異のコレクション

中国の長い歴史は、栄華を謳歌した王朝を新たな王朝が武力で打ち倒すことの連続である。新しい皇帝は、先の皇帝のコレクションを奪い取ったうえに、強大な力でさらに美術品をかき集め、またコレクションを築く、するとまた新たな王朝が興ってくる。皇帝のコレクションは積み上げられる各王朝をつなぐ糸のように伝世してきたと言える。それは、皇帝の権力を示すとともに、王朝の「正統性」を物語る役割を担わされたものであった。国立故宮博物院に所蔵される「文物」は、こうした歴代皇帝の集大成、つまりは漢文化の精華なのである。

中国大陸から海路を台湾へと渡った故宮の文化財は凡そ62万点。台湾に運ばれた中華の至宝は、はじめ台中県霧峰郷北溝の文物庫房に保管され、故宮の収蔵品の他に中央図書館・中央研究院史語所・中央博物院準備處の所蔵品も納められていた。昭和32年(1957)には北溝の陳列室で一般公開を始めた。その後中華民國政府は北溝の地が辺鄙であり、国内外の参観者を集めにくいとして、昭和40年(1965)8月に台北の外双渓に台北新館を落成し、一般公開した。その後国をあげて展示スペースの拡充と倉庫の建設および研究や出版・国際交流活動等のハードソフトの両面に力を注ぎ、その収蔵品の価値の高さも相俟ってルーブル・エルミタージュと並び称される博物館となったのである。

現在の国立故宮博物院は、台北市北部の士林区にあり、付近には高級住宅街が広がっている。この博物院には中華民國政府が台湾へ撤退する際に大陸の故宮博物院から精選して運び出された美術品が主に展示されており、その数6万点に及ぶ。(台北に運ばれた旧故宮博物院等の文物は約61万点である)

平成13年(2001)より大規模な耐震・改装工事が行なわれ、平成18年(2006)12月に完了し、翌年から全館が一般公開された。現在では、早期の台湾独立を求める泛緑連盟勢力の一部から「『台湾独立』と引換えに故宮博物院の文物を紫禁城に返そう」という主張が出ているが、実現の可能性はほとんど無い。

(文章:五郎丸浩/第20次結団式)

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